やっぱり規格外

シュワちゃんの映画といえば、彼自身の役柄は基本『超人』だ。一部ではそもそも人間ではないが、強靭な体躯は敵を滅ぼす武器として活用し、知識を持ってして相手を上回る戦術を駆使して翻弄する。その火力は一個師団に勝るとも劣らず、今作でもその勢いが衰えることはない。最初こそどこにでもいる余生を過ごす平々凡々な初老男性としての側面を見せているが、危機と直面すればするほどかつての面影、30代の頃に主演した作品の色を取り戻し始めていく姿が印象的だ。

そう思えばこのレイ・オーウェンズというキャラクターは、アーノルド・シュワルツェネッガーという俳優の歴史を物語るために作られたといっても過言ではない。劇中でも保安官として街を守る仕事はしていても、さして大きな事件も起こらないためにその実力は誰の目にも行き届かない。それは序盤でレイにピンチを伝えるFBIですら予想していなかったことだ。ネタバレをする、というよりは結末は既に見えているも同然だが、コルテスを最終的に逮捕してしまうのだから凄い。

ではこの『レイ・オーウェンズ』という警察官は何者だったのだろう。経歴こそ目立たないように見えるが、実はといえるキャリアを誇り、シュワちゃんだから納得だと妙な安心感を与えてくれるのも特徴的だ。

レイ・オーウェンズとは

今作において最も隠し玉として活躍し、かつ一番の目玉でもあるのがシュワちゃん演じるレイの存在だ。彼は元々ロス市警に勤務しており、退職した後は保安官でもあり、勤勉な性格も相まって人々からも好かれるようになる。それもあってか、まさか彼が防衛戦を張ろうと言い出した際には誰もが無理だ、無謀すぎるという当然の意見を呈する。それでもレイの一度火がついた闘志は誰にも消すことは出来なかった。

それもそのはず、迫り来る犯罪者『麻薬密売組織の麻薬王』とまで呼ばれた超大物だ。そんな相手であればかつてのレイならばたとえ殉職しようと捕まえようと躍起になるほどのこと。それというのも、レイはかつてロス市警において『麻薬捜査課』に所属し、そこの精鋭部隊の一員として手腕を振るっていた。だが任務の最中に犯人こそ逮捕できたが、仲間を全て失うこととなり、彼の精神的ショックは酷く重すぎた。仲間を失うのが前提ならこんな仕事はやっていられないとして、身を引く決意をしたという。

ですがロス市警、それも麻薬取り締まりの第一線で活躍していたという経歴からしても、彼が普通の保安官はもちろん、警察官としても一線を画しているのは明らかだ。FBIも彼が後半で見せる活躍に驚愕し、その経歴を調べて見て納得したほど。シュワちゃんの演じるキャラはいついかなる作品であっても、本当に人間ですかと突っ込みたくなるくらいの無敵性が溢れるユニークさがあります。

他のキャラクターについて

またラストスタンドではレイだけでなく、その他のキャラクターにおいてもシュワちゃんの魅力を最大限引き出して、面白さを増幅させています。例えばレイ率いる少数精鋭となる防衛部隊に武器を提供する『ルイス・ディンカム』の存在だ。彼はレイたちが住む街で武器を集めるコレクターとして有名で、ほとんど骨董品に近いものばかりを集めていたという。今作において街に大きな危機が襲来しようとしているとして、レイの要請で持っている武器を提供した。その中には旧式のガトリングガンを始めとした数々の武器で、彼がいなければそもそも防衛は成り立たなかったといえます。

また今作においてチームの結束力を高める活躍を見せてくれたのが『ジュリー・ベイリー』の存在だ。保安官としてもそうだが、まだ若いだけあって様々な願望を持っていた彼にとって、麻薬組織の襲来という一大事件は自分を試す最高の舞台と見なす。以前からレイの伝手でロス市警への転属を願っていた中で、活躍すればFBI入りにも夢ではないと考えていた。けれど彼の夢は儚くコルテスたちによって摘み取られただけでなく、その生命すら踏み潰されてしまいます。犠牲者を出してしまったことで、彼の親友で無目的に日々を生きていた『フランク・マルチネス』はジュリーの無念を晴らすために立ち上がり、事なかれ主義で静観しようと安全圏で見守ろうとした『マイク・フィギ―・フィゲロラ』にかつての正義を愛する心を取り戻させた。

シュワちゃんことレイが持つ本来のカリスマ性によって目覚め始める田舎町の住民たちの結束と団結力により、トロイア戦争にてヘクトールの猛攻すら凌いだアイアスの盾に匹敵する強固な壁となる。

コルテス率いる悪役について

今作における悪役であるガブリエル・コルテスは、絵に描いたような悪役だ。FBIの追撃すら振りきれるだけの兵力と火力、そして装備を持って当然のようにレイたちが待ち構える街をなんの問題もなく通過できると思っていた。

その点については作品を見てもらえれば分かりますが、もうあれやこれやと戦力を喪失していき、最終的にレイとの一騎打ちにまで追い込まれてしまう。迫り来る終わりの中で勝利に王手をかけるが、レイの熟練パワーに押されてしまって彼は敗北する。最後の最後まで悪党らしく、たまにある小物過ぎると三流めいた噛ませ犬的な立ち位置ではなかったのが、評価すべき点ではないでしょうか。負けはしたが、近年稀に見る本物の強敵といえる。

だからこそ面白い

こんな作品だからこそ、シュワちゃんファンは見るべきだ。往年の作品に勝るとも劣らない、世界的にあまりヒットしていないと評価はされていますが、それは人によって異なります。好きな人は好きな作品といえる。またラストにFBIを裏切ってコルテスと内通していた人間がいたが、最後に被害者面をしてのうのうと助けてくれてありがとうといえる姿は、滑稽だ。そういう意味ではきちんと笑いも含まれているので、コメディ部分もきちんと回収しています。